坐禅普及

主旨は慈悲。行は坐禅。

在家禅を辞めた理由とその周辺

本稿の構成 1 はじめに 2 入会まで 3 退会の直接のきっかけ 4 勧誘活動 5 会員の実際 6 公案 7 最後に 1 はじめに 一時期、伊吹敦先生の『禅の歴史』にも出て来る在家禅の団体に入っていました。組織のあり方に対する疑問や私自身の禅に対する捉え方…

【参考資料】禅における『教義の否定』

梁の武帝、達磨大師に問う、「如何なるか是れ聖諦第一義?」 磨云く、「廓然無聖」 帝曰く、「朕に対する者は誰ぞ?」 磨云く、「不識」 ――碧巌録第一則 禅は、多様な運動であり、それを統一的な観点から説明することには無理がありますが、私は、「教義の否…

「哲学的な問題」について考えていたことと「禅思想」

私が「禅思想」に興味を持ち、色々な本を読み囓っている理由には、私が、十代から二十代に入る頃までに考えていたことに沿う面が多いこともあります。やはり、自分を支持してくれるものは好ましいという自己愛から逃れることは難しいのでしょう。書いている…

統合失調症と悟り体験

【要旨】この記事は、要旨坐禅によるうつ傾向の解消等の主要な効果は、呼吸回数の減少を緒とする扁桃体の活動の低下によりもたらされると考えられるが、扁桃体の活動の過剰な低下は、統合失調症における自我意識障害及び誇大妄想に類いする症状をもたらし、…

【参考資料】不安なままでいいじゃないか

禅の目的の一つは、安心立命であるとされます。 「古来の常套の語(ことば)を以っていえば、安心を得るのが仏教の目的である。(略)安心とは、心を一定不動の處に安住せしむるの意で、謂ゆる宗教の力に依って、不動の信念を確立するということである。古来…

【参考資料】瞑想の副作用(第2版)

(1)大谷彰『マインドフルネス入門講義』 「マインドフルネス実践中にトラウマの自然除反応が発生することからも明らかなように、臨床マインドフルネスでも治療の差し障りとなる反応が生じることは早くから知られています(略)。マインドフルネスに伴う弊…

摂心会(合宿形式の坐禅会)の危険性(4)

岡田尊司先生の『マインドコントロール 増補改訂版』の内容を踏まえ、マインドフルネスの世界でも、問題が語られている摂心会やリトリートなどと呼ばれる合宿形式の坐禅会・瞑想会について検討する記事の4回目です。【これまでの記事】 ○摂心会(合宿形式の…

【参考資料】師弟関係(第2版)

(1)沢木興道:酒井得元『沢木興道聞き書き ある禅僧の生涯』「証道歌にも『紅梅に遊び、山川を渉り、師を尋ね、道を訪うて参禅をなす』とあるように、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、自分の教えを受けるべき正師を求めて歩いたもので、これを遍参(へ…

小さな自分という救い

「あらゆる生命と意味を宇宙のなかの何らかの地点に位置づけることにすると、人生の意味は、すっかり縮減されて、いわば何らかひとかどのものだと自惚れた蟻の幻想であることになってしまいます。私たちは、ほかでもない自らの生存への利害関心ゆえに自分自…

死を恐れる

20代の頃、一度だけ仕事をサボったことがあります。職場の建物前まで来たところで、職場に電話をかけて、その日の予定を全てキャンセルするようにお願いしました。その後、方々をフラフラと歩き回りました。最後、20階ほどの高さのマンションの最上階ま…

死を楽しみにする

「困難なときに坐禅をしたことがない人は、禅を学ぶ者とはいえません。ほかのどんな行為も、あなたの苦しみを和らげることはできません。ほかのどんな姿勢も、自分の困難を受け入れる力を持たないのです。しかし、長い、困難な修行で確立した坐禅の姿勢によ…

摂心会(合宿形式の坐禅会)の危険性(3)

前回の記事は次のとおり○摂心会(合宿形式の坐禅会)の危険性(2) (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/09/01/083035)これまで、岡田尊司先生の著書『マインド・コントロール』における、マインド・コントロールの五つの原理のうち、第一の原…

曹洞禅とマインドフルネス

私は、坐禅から瞑想の世界に興味を持ち、最初は数息観から入りましたが、曹洞禅の「只管打坐」に納得のいくものを感じて実践をするようになりました。只管打坐をするようになって半年ほど経ってから、マインドフルネスに関する専門書を集中的に読んでいたと…

坐禅は無功徳

「瞑想部屋などがあるんですか?」 以前ある方から受けた質問です。私が、一時期、禅の修行団体に所属していたり、色々な瞑想会に参加するなどマニアックな活動をしていたほか、長広舌を振うものですから、自宅でも相当マニアックに坐禅をしているのだろうな…

摂心会(合宿形式の坐禅会)の危険性(2)

前回の記事は次のとおり○摂心会(合宿形式の坐禅会)の危険性(1) (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/08/30/160712)岡田尊司先生は、『マインド・コントロール』の中で、マインド・コントロールの方法論を五つの原理に分けて整理されます。…

【参考資料】仏教者と家族

1 加藤耕山発言。秋月龍珉・柳瀬有禅『坐禅に生きた古仏耕山加藤耕山老師随聞記』146頁「修行というものは実人生、実生活の中にある。わざわざ衣をきんでも修行はできる。急いで茶畑に入るものではない。(略)富士山に登るのに、荷物をしょって登るのと…

摂心会(合宿形式の坐禅会)の危険性(1)

1 はじめに マインドフルネスが臨床の場で成果を出すに従い、その問題点も次第に明らかになってきました。このことは、これまでも本ブログで何回か扱ってきました。【参考】 【参考資料】瞑想の副作用 - 坐禅普及 扁桃体の活動の低下による弊害――坐禅の生理…

禅と全体主義――「戦争と禅と日本国憲法」追補

先に「戦争と禅と日本国憲法」の記事を投稿しましたが、これをきっかけに、改めて近代史をテーマにした本を読もうという気になりました。【参考】 ○戦争と禅と日本国憲法 (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/08/15/155159)近代史、特に、満洲…

テーラワーダにおけるカースト制の許容ほか――上座仏教の基礎知識(2)

上座仏教の基礎知識の2回目です。 1回目は次のとおり。現代テーラワーダは新宗教ほか――上座仏教の基礎知識(1) (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/08/18/040541?_ga=2.222862173.777479059.1597954280-961353732.1597260876)5 テーラワ…

現代テーラワーダは新宗教ほか――上座仏教の基礎知識(1)

禅と並ぶ坐禅等の瞑想の実践のもう一つの雄が上座仏教(テーラワーダ)です。科学的なエビデンスの揃ってきたマインドフルネスの基礎となったり、釈尊の直説に近いといわれるなど注目されています。禅との相違点を意識しながら、その基礎知識に触れて行きま…

戦争と禅と日本国憲法

1 個人的なこと 前置きに少し個人的なことを書きます。私は、1970年代生まれですが、父が歳をくってからできた子どもであり、父は、一兵卒(二等兵か上等兵のいずれかですが詳しくは知りません)としてニューギニアで終戦を迎えました。ニューギニア戦…

本ブログの記事に対する質問ついて

1 おねがい 本ブログの記事に対する質問ですが、各記事のコメントの機能を使って入力して、お寄せいただければと思います。本ブログのコメントは、私が承認することによって公開されることになっていますが、誰でも入力できるようになっています。質問への…

魔境(2)――坐禅の生理学的効果(11)

魔境(1)――坐禅の生理学的効果(10) の続きです。 (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/08/09/023521)5 「禅ブーム」の終焉と日本仏教における坐禅否定の系譜(1)「禅ブーム」とその終焉 禅宗史を繙くと、明治期に禅の流行していたこと…

魔境(1)――坐禅の生理学的効果(10)(補訂板)

※本稿は投稿者の記事の管理の不充分さから 冒頭部にかつての投稿と相当程度重複する点があるまま 2020年8月8日投稿いたしました。【参考】 ○扁桃体の活動の低下による弊害――坐禅の生理学的効果(2) - 坐禅普及前記記事をご覧になった方は3項からご…

「調心」その問題性(4)――坐禅の生理学的効果(9)

「『調心』その問題性」の4回目です。1回目 (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/07/31/225412?_ga=2.85241881.1854571952.1596114502-541515618.1562325655)2回目 (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/08/02/095441?_ga=2.1298…

「調心」その問題性(3)――坐禅の生理学的効果(8)

「『調心』その問題性」の3回目です。1回目 (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/07/31/225412)2回目 (https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/08/02/095441) 4 雑念をなくし、集中することを目指すことの問題性 (1)雑念をなく…

「調心」その問題性(2)――坐禅の生理学的効果(7)

「「調心」の問題性(1)――坐禅の生理学的効果(6)」から引き続いて、調心に関する知識に触れて行きたいと思います。前稿(https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/07/31/225412?_ga=2.85241881.1854571952.1596114502-541515618.1562325655) 2 …

自我の大切さ(第2版)

1 自我の否定で本当によいのか? 仏教の世界には、「自我」を否定するようなに思われる夥しい数の言説があります。確かに、私たちの不幸の大きな原因には、自己の幸福を実現しようとすることによって、他者との平等な関係が崩れてしまうことがあり、「自我…

「調心」その問題性(1)――坐禅の生理学的効果(6)

坐禅の構成要素は、「調息」、「調身」、「調心」といわれますが、「坐禅の生理学的効果」の記事では、(1)から(4)までで「調息」を、(5)で「調身」を取り挙げました。 (6)から「調心」を取り挙げようと思います。 これまでの記事○「扁桃体の活動…

姿勢を正すことによるテストステロンの分泌等――坐禅の生理学的効果(5)

坐禅の生理学的効果に関し、これまでは、いわゆる「調息」の問題について、次のようなテーマで触れてきました。「扁桃体の活動の低下――坐禅の生理学的効果(1)」 https://zazenfukyu.hatenablog.com/entry/2020/07/12/200328?_ga=2.85793821.589133550.159…