坐禅普及

主旨は慈悲。行は坐禅。

【参考資料】すべては解釈

(1)原田祖岳『白隠禅師坐禅讃講話』108~109頁

「闘争も不幸もすべて心の持ちよう=解釈=一つ、同じ事実も見ように依って蓮華にもなれば汚物ともなる。嬉しくもなり悲しくもなる。好きにもなり嫌いにもなる。黄金にもなれば糞土にもなる。すべてこちらの業の現れによって、客観世界が如何ようにも変って来るものである。だから同じく五十年の人生も、人の心の持ちよう、即ち解釈、見方一つで地獄にもなれば極楽にもなる。

(略)

 およそ誰でも自分は最も幸福だという解釈の出来ない人は、まだ正法の理解も信念もない証拠です。正法を信解した人は必ず自己の幸福に目覚めて、その境遇を真の幸福に向上させるものです。然らざれば佛法=真理=の未だわからぬ人であります。経文の中にも「菩薩は煩悩を以て菩提となし、凡夫は菩提を以て煩悩となす」とあります。菩提も煩悩も物に二様あるのではありません。円転滑脱、禍を変じて福となすはいと易きこと、不平も愚癡も憎悪も悲哀も不幸も不運もすべてこれ佛果菩提に至る処の実に貴い因縁であります。」

(2)新井石禅『教理と信仰』44頁

「何故に生死があるかというに是れは萬物変化の相であって宇宙活動の現象である。宇宙の本体は絶対平等であるが、恰も大海水に波瀾あるが如く、絶対平等とは申し乍ら霊動体であるに依て常恒不断に活動を起して息(や)まぬ(略)、然れば吾々の生も死も皆な霊動作用でありますから、生死として厭うべきも無く涅槃として欣うべきも無い筈である、けれども凡夫は常に生死の為めに縛られて、三界六道昇沈の相に苦しんで居るのは何故ぞというに、是れは宇宙その物より苦しめらるるに非ずして、皆な各自が自ら作り出だせし業相であります(略)此生死に対する観念亦之と同じく、苦痛と観るも愉快と観るも、その観る人の業障と思想のとの致す所である」

(3)間宮英宗『興禅護国論大意』12~13頁

「自分が本然の姿に立帰って一切のものを眺むれば、一切のものが本然の姿において見える。それだからこそ初めてのものの凡てをありのままに知る事が出来る。このものをありのままに知る力を般若という。生ある者は必ず死ぬと云う分かり切った自然の理に遭遇して、ある時は悲しみ、ある時は喜ぶ。生死其ものは喜びでも悲しみでもないが人間が勝手にそう感ずるのである。そして其感ずるままを真実だと思うて迷うている。凡て人間は銘々の立場に置いて、異なった色眼鏡でものを眺め、其れを本当の姿だとしている。そしてこんな気粉れな迷いがいくつも重なり合うて、なかなか取り去る事の出来ない曇りとなり、人間本来の姿を覆い隠している。銘々が自分の本来の姿を知らず、全く暗中路に迷うているのと同様であるから、自分の道の行くべき道を定め、いかなる何時に遭うとも決して屈しないという決心の出来よう筈はない。」

(4)エレーヌ・フォックス(森内薫・訳)『脳科学は人格を変えられるか?』40~43頁

「「アフェクティブ・マインドセット」のおおもとにあるのは、この、ものごとをどう解釈するかという偏りだ。脳はそうした認知のバイアスを幾層も含んでおり、それらが無意識下で作用する結果、人間はそれぞれ偏った視点でものごとを見るようになる。人間の心にはこのように、良いことや悪いことをすばやく察知したり、どちらともとれるような社会的状況を自分の良いように、あるいは悪いほうに解釈したりする癖がある。それこそが、人が自分をとりまく世界をどうとらえるかの土台になっている。

(略)

 緊急度の高いものに注意を集中させ、残りは認識から遮断する脳の習性は、きわめて重要だ。それがなかったら、人はあふれる情報に押しつぶされ、身動きがとれなくなってしまう。だがこの選択的注意はいっぽうで脳が重要でないと判断したものをすべて認識からふるい落とす作用をもつ。「アフェクティブ・マインドセット」のいちばん土台の部分にはこの選択的注意が存在し、人が何に注目し、何を無視するかに影響を与えている。

 認知心理学者としてわたしは、脳のこの能力に強い関心をもってきた。脳には、あるものごとに注意を集中し、特定の事実や経験だけを選びとって記憶する能力がある。個々の性格や経験によって色づけされた一貫したストーリーの中に、取捨選択した記憶を織り込んでいく能力もある。これは現代の科学における、たいへん魅力的なテーマだ。人の心はそれぞれ無数のバイアスに満ちている。人がどんなふうに世界を見つめるか、どんなふうに過去を思い出すかは、そうしたバイアスに影響されるのだ。

 この世に生まれた瞬間から人間は、嗅覚や視覚、聴覚や触覚に訴える情報に四方から襲われる。だから赤ん坊の心はまさに情報の嵐の中にある。アメリカの科学的心理学の祖ウィリアム・ジェームズは、これを「花ざかりの騒音と混乱」と呼んだ。この情報の嵐を整理するのが脳の役目だ。無数の情報の中から重要なものだけを認識し、重要度が低いものにはあまり注意を払わないよう超背英する複雑な仕事を、脳は確実にこなさなくてはならない。こうした脳のはたらきが心に作用し、心の中で起きるあらゆるプロセスを導いていく。」

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