心理カウンセリングにおける仏教に類似する考え方その1
ほかの人の悩みが解消できるようになりたいと考えて、心理学の勉強をしようと考え、松原達哉編著『図解雑学 心理カウンセリング』をネット古書店で購入したところ、仏教的な考え方と思えるものがありました。
佛陀自身が、人間の心理について考え、その悩みに答えていたのですし、森田療法には禅の影響もあるなどと言いますから、当たり前のことなのかも知れません。
以下、頁数は前掲書によります。
1 除反応(38頁)
心の緊張を解く具体的な方法として一般的に用いられるもの。
フロイトが考えた。
手順は次のとおり。
① 感情抑圧の原因となっている心的外傷の経験を思い出させる。
② それを口に出して叙述させる。
→原因となっている感情が放出され、症状が消える。
※ 心的外傷の経験というマイナスの要素に向き合うという所が仏教的な感じがする。
もっとも、仏教的な瞑想により、心的外傷をもたらした体験が復活したために、精神的な負担を感じる場合があるとされることからすると、健常者が日常の心がけとして、自分の悩みなどの問題にきちんと向き合うという上では良いかもしれませんが、何らかの深刻な精神的な問題を抱えている場合には、やはり、専門家によってなされた方がよいということになるのでしょう。
2 カウンセリングにおける自己開示(70頁)
自己開示とは、自分の気持ちや考え、生い立ちや人生観などを、言葉にして率直に相手に伝えることをいう。
これにより
① 葛藤や不安、うっ積した感情などが解消される
② 言葉で表現するため、自分を客観的に理解できる
③ 相手との人間関係がより密接になる
④ 自立心が確立される
などの効果が期待される。
カウンセリングの場面では、来談者が自己開示することによってカウンセリングが効果的に進む。
また、カウンセラーも自己開示的態度をもって臨むことが重要ある。
クライエントとの間に共感性が高まり、信頼関係が強化される。
同時にクライエントの防衛的機能が緩和し、自己開示的態度が促進される。
さらに、クライエントが現実の自己を受容するようになる。
※やはり、自己に向い合うというところがよい。
カウンセラーが自己開示をすることが自己自身だけではなく、クライエントに対しても、救いになるという点も、非常によい感じがする。
3 共感的理解(72頁)
カウンセラーが来訪者の感情に巻き込まれることなく、来談者の世界をあたかも自分自身のもののように感じること。
来談者の表現について疑いをはさむことなく、その真意とそれに伴う本人の気持を正確に感知することを意味する。
カウンセリングや心理療法においてカウンセラーが身につけておくべき基礎的態度の一つ。
※ 「来談者の世界をあたかも自分自身のもののように感じる」
「真意とそれに伴う本人の気持を正確に感知」
……「正受」せよということですね。
4 非指示的カウンセリング(88頁)
来談者の自己決定能力ないし自己実現能力に大きな信頼を置くことが基本。
カウンセラーの態度においては、次の3つの条件を満たすことが必要(カウンセラーの3条件)
① 純粋性=カウンセラーが自分自身をごまかさずに来談者に接すること
② 無条件の肯定=来談者のすべての面を、条件なく暖かに受容すること
③ 共感的理解=カウンセラーが来談者の私的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じとり、理解すること
カウンセリングのプロセス
① 場面構成=カウンセリングの場所や時間、費用などについて話し合う
② 来談者のすべてを受容する態度をとり、相槌を打って来談者と向き合う
③ 繰り返し=来談者が使った重要な言葉をそのまま繰り返し応答する。
→来談者が今まで気づかなかった内面に気づくという効果がある。
④ 来談者の言わんとする所をより適切な言葉で明確化する。
※ 「来談者の自己決定能力ないし自己実現能力に大きな信頼を置く」というところが、「衆生本来佛也」という感じがする。
本来人間は、悩み、迷い、苦しみがあってもきちんと対応できて生き抜くことができる能力を具えている。
なぜなら、悩み、迷い、苦しんでいるとき、その当人は確実に生きているのであり、実際には、悩み、迷い、苦しみに対してきちんと対応し、生存することができているのであり、勝手に、対応できていないと勘違いしているからだ。
「純粋」、「肯定」、「共感」、「気づき」も、とても、(大乗)仏教的だと思う。